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プロローグ
夏休み、最終日。
町でひときわ人通りが少ない踏切の真ん中で、子どもの白猫が、怪我をして動かない脚をペロペロと必死に舐めていた。
みー、みー、と鳴いて助けを求めるが、今は夜なうえに町の中心では花火大会をしているらしく、人は一人も通らない。
静寂のなかで微かな子猫の鳴き声と、遠くで聞こえる胸を打つような音が、こだまして響く。
そこへ、レールを伝ってものすごい速度で迫りくる電車の音も加わる。
そして、子猫の体に昼間よりも明るい光が照らされる――
――暫くして電車が過ぎ去ったあとには、遠くで、胸を打つような虚しい音しか聞こえてこなかった……
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