初夏

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授業はいつも通りに退屈で眠気を誘うものだ。 最初のほうこそ集中して黒板を見詰めているものの、次第に飽きてきて、ペン回しや落書きをし始めてしまう。 そして次に虚空を見詰め何も考えなくなる。 それにも飽きたら、空にゆるゆると浮かぶ雲をぼうっと眺め、先生の子守唄で机に沈む。 そんなお決まりパターンに従順していると、やっとのことで授業終了のチャイムが鳴った。 俺は盛大にあくびをし、伸びをしながらそのまま机に覆い被さった。 将来成りたいものも特になく、全く進路も決まっていないので、毎度惰性で授業を受けてしまう。 そろそろ色々決めなきゃな、等と考えていると、突然上からやかましい声が降ってきた。 顔を上げなくとも聞き慣れているのですぐにわかる。幼馴染みの不知火夏(しらぬいなつ)だ。 「ひかる!早く起きろー!!NEPに行っくぞ!!」 元気いっぱいに俺を呼ぶ声。髪全体を括っているトレードマークのリボンが、夏の意志に連動するかのようにぴょこぴょこと跳ねている。 だるいので寝たふりをしようかと一瞬考えたが、後々面倒なので顔を上げることにした。
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