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4月 7日 天気は曇りだった。
校庭の端には、週番の教師から
遅刻で名前を問われる生徒の姿が
幾人か確認できた。
本来なら入学式の日、
余計な問題を避けるためなのか、
在校生は休日扱いとなるらしい。
現に去年ーー自分の入学式には、
生徒会役員と吹奏楽部の先輩しか、
式に参加していなかった。
部活を行う生徒も登校してはいたらしいが、姿は見なかった。
きっと屋内の運動部は休みだったのだろう。
しかしながらーー今年は違った。
見ての通り、やる気の無いというより、
出席する意味が根本的に無い生徒達で、
校舎内は溢れかえっている。
これは、前生徒会 書記にして、
今期のから生徒会長へ、見事に就任した
とある生徒の……余計な陰謀で、
全校生徒が入学式に強制参加となった結果だ。
諸君も、よく御存知の人物とも言えるし、
まだ、この人物を含めて数人しか、
うちの生徒を知らないとも言えるね。
ああ、そうさ。
現生徒会長を務めるのは、何かと話題の絶えない天才的問題児たる、我が実兄だ。
握人はこの日まで、
ミリタリー・オカルティクス・ナルキッソスとかいう、
珍妙な名前の同好会を突如……、
現在の姿(軽音楽部モドキ)へと変貌させたのだ。
ちなみに、その変態的な同好会の会長は、
現在もトップとして君臨している。
「お前に頼みがある、交換条件だ……」
と、ボクは兄貴から生徒会の書記を、
まるで御家の引き継ぎの如く、
押し付けられそうだったので、
それを断る代わりにーーある新入生を、
この部へ勧誘するように頼まれたのだ。
つまりは、何の役職もないボクを入学式に参加させるためだけに、関係の無い生徒全員を、登校させたわけだ。
ホント滅茶苦茶なヤツだろ?
いつか全校生徒に暴露してやる。
……と、まぁお気付きの方も多いだろう。
この遣り執りの中心人物こそ、
この頃まで、世間で話題だった。
天才ピアニストーー媛由利 奏であり、
この日の出来事が、順風満帆な過去から、
現在の間違いだらけの日常へと堕ちる、
岐路となった、厄日(やくび)なのだ。
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