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事務所についた。
至って普通の「事務所」。
中身も普通、である。
やっていることも。
「戻りましたぜ」
「おお、雛。無事帰還したな」
「おう」
こいつの名前は知らない。俺はこいつに育てられ、いろいろ教えられた。親みたいなものか。
「…で、お前はこれで“理不尽な”依頼を50件済ませたことになるのだが…何か思うところは?」
にやつきながら聞いてくる。
「理不尽…?うーん、俺はただ稼げたなあ、とは思ったが。何も俺にとって理不尽ではなかったが」
そう俺が言うと、よしよし、と言わんばかりの顔をする。
「オーケーオーケー。まあ今回のはまだマシだったし、27件目の時のお前の反応を見て、今後ひっかかることはないだろうと思っていたからな。」
「27件目の話、散々引っ張るな。他の依頼と何が違ったんだ?」
「一応、な。お前以外の殺し屋にとっては非常に大きな違いだったんだがな。」
「はあ」
「…ともかくお疲れさま。今日はゆっくり休め」
「はいはい。」
毎回、依頼を持ってくるのはあいつ。
俺はそれを淡々と受ける。
こなす。
それが普通なのだ。
この前あった連中は、殺し屋という稼業がおかしい稼業だとか言いだした
同じなのにな。何が違うんだ?
時々、殺し屋仲間の中からも、お前はそんな依頼受けられるなんておかしいだとか言う連中がいる
同じなのにな。何が違うんだ?
仕事だ。仕事をこなすだけだ。
俺は仕事をこなしているだけだ。
依頼があり、それを受け遂行し、それに見あった代金を受けとる。
普通、である。どう見ても。
凡人にとっては、殺しを扱うことが、殺し屋にとっては、俺が殺す相手を微塵も気にしないことが、おかしい、らしい。
普通だ。誰がなんと言おうと。
普通。
そんなことを考えながら、俺は風呂に入り、さっさとベッドに入って寝た。
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