隠せない気持ち

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「明日はオフだ!!やったー!!じゃ、お先に~」 「お疲れー。」 亮太くんたち何人かが一目散に帰る。 「よし、俺らも帰るか。」 「うん。」 桔平くんの斜め後ろを歩きながら思った。2人で帰るの初めてだ。緊張するなぁ。ドキドキしてくる。 桔平くんは何か思っているのかな?気にはなるけれど聞くこともできない。表情はいつもと変わらないから、別に何とも思ってないのかな。それはそれで悲しいけど。 「あっ!きっぺいにいちゃん!!!」 しばらく歩いていると、後ろから子供の声が聞こえた。桔平くんの名前に反応して振り向くと、そこには小さな男の子がいた。 「やっぱりおにいちゃんだ!」 その男の子はにこにこしながらこっちを見てくる。 「え?お兄ちゃん??」 桔平くんに疑問をなげかけた。 「うん、弟。小1。」 「弟くんかあ。へえー、桔平くんにこんなにちっちゃい弟いたんだね。名前はなんていうの?」 「…えーとね…ふじしまともき…」 男の子は桔平くんにしがみつきながら恥ずかしそうに答えた。人見知りかな? 「ともきくんっていうんだね。私は彩。桔平くんのお友達。」 「あやちゃん…?」 「うん。よろしくね。」 ともきくんは学校のプールに行った帰りのようだった。髪がまだ少し濡れていた。 一緒に歩いているうちに、ともきくんは少しずつ私に慣れてきたみたいだった。 「あやちゃん手つなご!」 いつもの別れ道に近付く間際、小さな手で私の手を握ってきた。 「智紀、彩は家あっちだからおしまい。」 「やだ!!」 「わがまま言うなって。」 「やだやだやだ!!!あやちゃんがいい!!」 桔平くんが納得させようとするけれど、意地を見せるともきくん。 「あやちゃんおうちきてあそぼうよぉ~。」 そう言って私の腕を頑張って引っ張る。 「智紀、彩困ってるだろ。」 ため息をつく桔平くん。
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