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「あっ、ありがとう。迎えに来てくれたんだ」
「別にお前の為とかじゃないから勘違いするなよ、篠子さんに頼まれただけだ」
新はつい、そう嘘を付いてしまう。
立夏は傘を開いて、屋敷の方へ戻っていった新の後ろをついて歩いた。
「でも、ありがとう!助かりました」
「・・・ふん」
立夏は鼻歌をうたいながらどしゃ降りな空を仰いで歩いた。
さっきまでの心細い夜道じゃなかった。
「鍋に篠子さんが作り置きして帰ったビーフシチューがあるようだ、今夜はそれを食べよう」
「はい、わたし、お風呂入ってきます」
立夏は自分の部屋へ戻って行った。
その時だった、新の携帯の電話が鳴った。
「久し振りだ、私だ」
「母さん?」
新はぞくっと身を震わせた。
女性恐怖症になってこの屋敷に籠ってから、ずっと家族の女性とさえも会っていなかった。
「ご結婚おめでとう~、婚約と言った方が正しいかしら?パパから聞いたわよう」
楽しそうに電話越しで笑っている。
「どうせその女嫌いも全然治ってないんでしょ、無意味よね」
「誰のせいでこんな・・」
「だから、私が救世主をそっちに送ったから、安心しなさい」
救世主?
聞き返すと、母は説明してくれた。
「来月、そっちにエルを派遣するから、仲良くしなさいよ」
「エル?何で?」
意外な名前に、新は面食らっていた。
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