箱庭恋愛のススメ

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* 「立夏さん、はい、お弁当。初登校、頑張ってくださいね」 白いスカーフに、紋章入りの黒いセーラー服。 屋敷からふもとまでを繋ぐ長い石段を降りている時、すれ違った篠子さんから手作りの弁当を貰った。 立夏は鞄を手に取ると、学校へと向かった。 変な時期での転校生だと、新しい高校ではすぐに注目された。 ここでは、まだ旧姓を名乗ることにしていた。 「橘さんって、蓮見川の坊っちゃんの嫁に貰われたんでしょう?」 隣の席のショートカットで目の大きな少女に話し掛けられた、立夏は驚いていた。 「なんで知ってるんですか?」 「あたし、向こうの家政婦の篠子の娘。お母さんから聞いたよ」 にっと白い歯を見せて彼女は笑った。
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