箱庭恋愛のススメ

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「あたし、志水 朱希。 良かったら、友達になろうよ、立夏って呼んで良い?」 「うん、よろしく、えっと・・朱希」 二人は笑いあった。 そして、放課後も帰り道が一緒だと言うので、ふもとまで肩を並べて歩いていた。 「蓮見川の坊っちゃんも、うちらと同い年ぐらいだろ?もう、ずっとあの屋敷に籠ってるんだね。 立夏、大丈夫?意地悪とか、いやらしい事とかされてない?」 朱希は心配していた。 あの山 一杯が、全て蓮見川家の私有地らしい。 そこの屋敷に一人籠っている新は、一種の怪談のように地元では有名らしい。 「新さん、女の人が苦手らしくって、それで籠ってるみたい」 「女の人が?」 朱希は度々 蓮見川家の山に入ってく青年らを思い出していた。 「なるほど、ホモね」 「ほもってなあに?」 「男が好きってこと、いつも美形なお兄さん達を取っ替え引っ替え屋敷に呼んで、・・・良いわね!」 「良いもんっすか?」 何故か目を輝かせていた朱希を、立夏は不思議そうな目で見ていた。 「じゃ、朱希、またね」 「バイバイ」 立夏はボーッとしながら、夕映えの中、石段を登った。 ふもとから屋敷まで石段を登り暫く歩いて合計15分。 「あ、橘 立夏さんですよね」 屋敷に入ると、リビングで城島とお茶をしていたのは、見知らぬ綺麗な顔をした青年だった。 垂れ目気味でにこやかで、図体が大きい割りに大人しく優しそうな人だった。 「新妻ちゃん、おかえり~」 城島が手を振っている。 「初めまして、黒江 貴弘と申します。新君の教育係をしております」 「立夏です。よろしくお願いします」 二人は握手を交わした。 立夏は、黒江の独特のほんわかした雰囲気につられて、思わずボーッとしてしまう。 「帰ってたのかよ、はあ」 新が不機嫌そうに、立夏を迎えた。 「そうだよ、新妻ちゃんのお帰りだよ、おかえり~!くらい言えないの?」 新を立夏の方に無理矢理向かわせる城島、新は冷や汗をたっぷりかいて、青い顔をしていた。 「ただいま、新さん」 「お、おか・・えり――」 ニコッと立夏が笑いかけると、新は更に硬直した。 そこで立夏は、ふと口に漏らしてしまう。 「新さんはやっぱり、"ホモ"の人なんですか?」 立夏の思いがけない問いに、新は愕然とし、城島や黒江は大爆笑していた。 「何でそうなるんだよ、バカじゃねーの」 新は大激怒した。 立夏は首を傾げるだけだった。
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