†醒†

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そして、 更に翌日の 10日目の昼下がり。 庭の木陰で、 「子ヤギの上で……おどりをさぁ、おどりましょ……」 あどけないリリの歌声と 手を叩き会う、明るい音。 「ランラララ、ランランランラン、ランラララ、ラララ……」 馴染みの場所となった 庭の樹の根元に座り、 ロアと向かい合い 歌に併せて、 互いの手を叩き会う手遊び。 時々、歌と手を叩く 間合いが遅れ、 「ランラン……あーッ!また、失敗した」 ふっくらと頬を膨らませ 悔しそうにするリリに、 「ほら、諦めずにもう一度だ」 淡く苦笑しながら、 励ますロア。 そんな二人の微笑ましい様子を ロアの傍らで見守るクロア。 既に日常と化した、 穏やかな明るい光景。 そこへ、 「やっぱり、此所に居ましたね」 不意に割り込む、 朗らかな声。 「あ、お兄ちゃんッ!!」 「こんにちは、リリ、」 初めの時とは違い、 執事の案内を断ったらしい 一人でのセキルの来訪に、 嬉しそうにセキルの元へと 駆け出すリリ。 すっかり、 セキルに懐いた様子のリリを セキルもまた、馴れた様子で 抱き上げ、 「元気に遊んでた?」 「うんッ!リリ、げんきにたくさん遊んでるッ!」 「そっか、それは良かった」 挨拶代わりのやり取りを 楽しげにリリと済ませると、 セキルは柔らかな笑顔に 真摯な眼差しを浮かべ、 「今日は小兄上達も一緒なんです。兄上」 「分かった」 と、ロアへ 中央組織筆頭、熾天使長 ディフェル。 神殿筆頭、聖司官代理、 レティス。 ならびに、 智天使長セティア、 座天使長ザイル達と共に リリの出生と身元が 明かされた事を告げに来たと、 訪問の目的を伝えた。
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