†糸†

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魔族との混血児である リリの存在を隠し育てた者と リリを育てた存在の 正体を暴いた者。 「やはり、貴方様が私を捜し当てると思っていました」 互いに沈黙する中で 先に口火を切ったのは 神官長ルファ。 「あれだけ、分り易く痕跡を残せば、"自分だ"と言っているようなものだろう」 静かに告げるルファに対し ロアは淡々と応える。 「分かり易かったですか…、」 ロアの余りに素っ気ない口調と 応えの内容にルファは苦笑する。 ロアは、 「あぁ、」 意味の無い溜め息のように 認め、 「大体、あの年頃の幼児が途中で髪と瞳の色が変わった者を迷いもせず、父、母と断言するのは、"本来の髪と瞳の色をした姿と顔を直接、知って居るからだ"」 何の感情も無く、 ルファに告げる内容は、 ロアが始めから、 リリの身内が 神殿内部の者だと 確信していた事実と理由。 それは 初日にリリが保護された時、 リリの 余りに迷いの無い様子から 気付いて居たと云う事。 初めにリリがロアを迷い無く "お母さん"と呼び、 ロア達に保護された時と、 中央管理局で、 別室に移動した直後からは、 髪と瞳の色が違った ロアとクロア。 にも拘らず、 変わらずにロアを真っ直ぐに "お母さん"と呼び、 髪と瞳の色だけでなく、 眼鏡を外したクロアを リリは同じく真っ直ぐに 迷う事なく、 "お父さん"と呼んだ。 髪と瞳の色が違うだけでも 相手の印象は大きく変わり、 更に、 眼鏡等の直接、 面に付ける道具が加わると 親しい関係の者であっても 直ぐには気付けない程、 印象が変わる時がある。 しかし、 保護された時のリリには 初対面である筈にも拘わらず その迷いが無かった。 元の髪と瞳の色に戻った事で、 全く、印象が変わったロアと 何よりクロアを、 しっかりと見詰め、 父と母と呼んだリリ。
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