†糸†

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それが可能なのは、 ロアとクロアの姿を 母親と父親として 直接、知って居たからこそ。 そして、 「私が父聖主から神殿以外への移動を許可されたのは、6年前」 6年前のあの年、 魔王進現の起きる 少し前の時期から、 漸く、神殿以外の場に 赴く許しが与えられたロア。 それまでは、 喩え、第6階層であっても、 神殿以外の組織の者は 極一部の高官を除いて、 ロアの姿を知る者すら 居なかった。 故に、 当然、 ロアとクロアの関係についても 他の組織に於いては、 "親密な関係があるらしい"と 不明瞭な噂だけが 密かにあっただけの状況。 ロアの姿絵が出回る事など 現在でも言語道断であり、 当のロア自身も 聖主から許可を与えられた後の 現在に於いても、 必要が無い限り 神殿の敷地…、 聖司官執務室と 居住としている奥離宮、 聖司官専用室を 往き来する以外は、 他に出歩く事が無かった。 そんな状況の中で、 まだ、産まれて間もない 幼いリリに、 ロアとクロアの姿ごと 両親だと教え込む事が 出来る者は、 同じ組織に属し、 ロアとクロアの関係を知り、 毎日、顔を合わせる事が 出来る者だけ。 「後は6年前……、例の件の直後に神殿内に於いて、急に環境を変えた神族、上位天族…、私と面識の強い地位の者を捜し出せば答えが出る…、」 ロアがレティスから預かった 6年前の事件での神殿の詳細と その後の状況の資料。 特にロアが不在であった 2ヶ月の間で、 環境を急激に変えた者。 イヤ、 変えざる逐えなかったのが、 「母となる者が懐妊に気付くのが約3ヶ月から2ヶ月。あの事件直後の混乱が残る状況の中で突如、入籍したのはお前だけだ」 まだ、組織内に於いても、 事件後の調査、事後処理等の 作業や混乱、 事件の内容が内容なだけに 詳細までは明かされなくとも、 一部の真相は知らなくては なからなった高官達に 自粛の意識が強かった中で、 入籍と云う、 本来、生涯に関わる 最も控えるべき祝い事を 行ったのが、 目の前の神官長ルファだった。
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