†偽†

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休暇日の明けた月曜の早朝。 各組織での始業前の時間帯に 中央組織が次期聖主の 安全と無事を確認する為に、 ロアに義務付けられている 日課として、 中央組織、熾天の宮の 熾天使長ディフェルの元を ロアはクロアと共に訪れていた。 ロアの側近として行動するため ナキルをフィリルと共に 聖司官執務室に待機させ、 クロアと二人で 熾天の宮を訪れたロアを、 「兄上、おはようございます」 真っ先に 弟として出迎えるセキル。 「あぁ、おはよう」 ロアも始業前の時間とあって、 中央組織内の場であっても 兄としてセキルに 早朝の挨拶を返す。 熾天の宮、熾天使長執務室での 普段と変わらない いつもの朝の光景。 だったが、 「あれ?…兄上……、」 熾天使長執務室に クロアを伴い入室したばかりの ロアを、 セキルは出入りの扉の位置で 出迎えた状態のまま 不思議そうに見詰め、 「何だ?」 ロアを正面から見詰めたまま 黙り込み、 微かに首を傾げるセキルを 訝しげに見詰め返すロア。 ロアの傍らに控えるクロアも セキルの様子の理由が分からず、 三人の間に落ちる 僅かな沈黙。 その果てに、 セキルが不意に身を屈め、 「クロアと何かありました?」 「ッ!?」 ロアの耳許で囁く、 セキルの察し。 ロアの中ではまだ、 後を引いている、 前日のナキルとの会話の一件。 クロアと"相思相愛"だと 指摘されたロアの 微妙な心境の揺れを 的確に察した弟の一言。 途端に上がる 「イタイ、イタイイタイイタイッ!兄上ッッ!?!?」 セキルの悲鳴と、 セキルの頬を無言、無表情、 問答無用で抓ったロアの、 「次はその頬がどこまで伸びるか、試すぞ」 脅迫を兼ねた 静かな八つ当たり。
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