眩惑

3/9
前へ
/26ページ
次へ
「ロイヤルストレートフラッシュ。おめでとうございます。」 勝者にニコニコと微笑む白髪のディーラーがいた。髪のみならず全体的に色素が薄く淡い雰囲気を漂わせるが、その体躯は淡さとは縁遠く背も高く男性的である。 「む?」 ピクリとディーラーはその場にそぐわない異様な気配を感じ、柔らかい表情のまま凪いだ視線を向けた。 ──ガシャアアアン!! 突如、フロアの入り口のドアが吹き飛ばされ、悪臭を放つ魔族が現れた。 鳥と獣を合わせたような体躯の体高が5メートルは在ろうかと言う魔族。 「おやおや、うちは一見さんお断りしてますのに…。」 暢気な口調で言うと、軽やかな動作でテーブルを飛び越え、混乱に逃げ惑う人の中を逆に堂々と歩いて突き進んで行く。 「マナーの悪いお客様にはお引き取り願いますよ~」 イタズラっぽい笑みを浮かべ、ぐっと一瞬重心を沈める。 ふわりと柔らかく髪が揺れ、次の瞬間には魔族は天井近くの 壁に吹き飛ばされていた。 魔族を吹き飛ばした黒い影が霧散する。 「Oh~…服がグチャグチャです…」 弾け飛んだ魔族の体液に袖や顔が汚れつつ、ディーラーは呟いた。 ズルル… 魔族は潰れ掛けた身体を壁から引き剥がし、再び蠢き始める。崩れた体の部分から瘴気が漂い始めた。 「まだ動くのですか~?しつこいですね…。」 ふふ…と黒い笑みを浮かべた。 「これは¨破壊¨が必要でしょうか?」
/26ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加