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「…おかしいな…こっちだと思うんだが…」
自らの腰の高さほどの茂みを掻き分けながら、青い髪の精悍な顔付きの少女はひとりごちた。
道を案内してくれた村の人間の案内通り歩いてかれこれ二時間。
一向に山道を見付けられずにいた。
それもそのはず。彼女は村人に教えられた通り南を目指したつもりで東へ歩き出し、親切に山道に続く道が作られていると勘違いして偶然発見した獣道をひた進み、現在は獣道すら無い深い山奥にいるのだ。
因みに200メートルほど南西に向かうと山道が在るのだが、木々が鬱蒼と空を覆っている現状況では方角を頼る事は難しかった。
「もしや…道を間違えているのかな?」
遭難して二時間と数分。漸く¨もしや¨に至った。
「大変だ…どうし……」
どうしよう、と呟きかけた時。ゾクッ!と背筋を悪寒が走った。
刀に手をかけ、バッと振り返る。
「……」
一見何の気配も無いように見える。
意識を周りに集中させ、そして、少女は気付いた。
¨本当に¨
¨全く気配が無い¨
──と。
道を探すことに夢中になり、周囲に気配が無いことに安全と判断して進んでいた少女は戦慄して初めて気付いた。
いつからか、周囲に¨僅かな気配すらしない¨と。
嫌な予感がした。
何かが潜んで這い寄ろうとしているような感じがする。
(魔族か?…いや、でも…ならば……)
─ザザザザ!!
「!!」
遠くから迫る音に、周囲が震えた。
─ゴォオオァアアアアアア!!!
「!…魔族…!!」
耳が痛くなるような咆哮が轟き、一方向から光が射した。
「!!」
そして、少女の目に魔族の前に身を屈める人影が写った。
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