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「んん─…?」
瘴気を少し吸い込んでしまった。途端に、体が重さを覚える。
(この瘴気…、麻痺性だな…)「まったく…タチが悪いなぁ。」
身を屈め、刀に手を掛けたまま機会を伺う。
下手に近付けば瘴気を更に吸い込みそうだった。
しかし相手の間合いに立ってる以上拡散する瘴気は確実に身体を蝕む。
つまり…
(早めに勝負を着けないと…)
リンはグッと息を止めると、一蹴りで目の前の魔族の足元に滑り込み、腹を裂く。
変色した体液と内臓が傷口から崩れ落ちた。
更にもう一撃、背中を狙おうと踵返すが…
「ッ!!──」
瘴気の影響で体が思うように動かない。
結果、敵の魔族が自らの腹から溢れた内臓を踏み荒し、臓物が体から引きちぎれるのも構わず繰り出した前肢の攻撃を受けてしまった。
「おっと…と!危ないなぁ…」
体が浮くほど弾き飛ばされたが、難なくステップし、着地する。
「まぁったく…、我ながら情けない…」
やれやれと呟き、ふぅっ…と息を整える。
「汚いね、醜いね。哀れだね。けどそれは、君が悪い訳じゃない。」
言い聞かせるように決意するように呟く。
刀を鳴らして構え直し、リンは微笑む。
「せめて安らかに眠りたまえ。」
踏み出したリンの刀が魔族の喉と下顎を切り裂く。
更に旋回を掛け、心臓が在るべき場所を断続的に2撃突き立てた。
「──…。」
と、魔族の体がガクン!と大きく痙攣し、崩れるように倒れた。
咄嗟に飛び退いたリンの目に、魔族の頭に刀を突き立てた少女の姿が目に写る。
「…怪我はないか?」
息ひとつ乱すことなく、凛とした声で問い掛ける少女は男性と見間違うほど堂々とした者だった。
(わ──…)
「今時の子はカッコイイ子が居るなぁ…。」
一方のリンはの相変わらず暢気な感想を呟いた。
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