眩惑

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数キロ離れた場所からでも解る。 その一体はきらびやかなネオンに光輝いていた。 「まさに100万ドルの夜景と一体所かな…」 眼下にその景色を眺めながら、金髪の女、リンは静かに呟いた。 若草色の着物を足を出すように短く着付け、腰には白鞘の刀を穿き、雨でもないのに赤い番傘を差している。 胸元からは豊満な胸元が覗き、その胸の前には神父姿の時と同様大きな象牙の十字架が揺れていた。 高層ビルの屋上に立ち、リンは人々の織り成す賑わいを慈しむ様に眺め、唇を開く。 「こんな素敵な街に不粋な物を投げ込むこと、悪く思わないでくれよ。」 ズルリ… リンの背後に大きな影がムクリと身を起こした。 鳥の頭に獣の胴。 体躯からは腐り落ちた肉体が崩れ始めていた。 不気味な8つの目がギョロギョロと各々勝手に蠢く。 「すぐ終わるからさ。」 街で一番高い建物。 統治者を頂くビルを前に、リンはやはり微笑んだ。
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