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「…っと、とりあえずこの話は横に置といて」
そう山崎が口火を切ったことで、エキサイトしていた面々は、とりあえず今は落ち着くことにした。まあ、お決まりのセリフによる
効果なのだが。
なんにせよ、山崎の必死に振り
絞った勇気は報われたのである。
「…で?話ってなんだい」
まず口を開いたのは白フンの西郷こと、西郷特盛だ。
「我々、現在とある案件のために攘夷戦争当時のことを調べているのですが、西郷殿、まさしく当時めざましい活躍をなさったあなたに、お話を伺わせていただきたいと」
「へぇ…。当時のことを…ねぇ」
西郷はチラと銀時を見たが、本人はいつものように面倒くさそうに鼻をほじっているだけだ。
「悪いけど、そちらの事情がわからない限り、教えることは出来ないわ」
「「!!!」」
「テメェ…」
逆上していまにも刀をぬきそうな土方を近藤がおさえる。
「理由をお伺いしても?」
西郷はため息を吐き、過去に想いを馳せるように遠くをみた。
「…あたしら皆、元攘夷志士っていうのはね、ようは負け犬なんだよ」
西郷はもう一度大きく息を吐き出すと、どこか諦めたように目を伏せた。
「敗者だ、ってことを、いまだに認めないやつらもいるけどね、
私はもう、戦争なんかしたくないんだよ。
国なんて背負ってたって、自分の一番大切な人間守れなかったら世話ないわ。
なのに…」
西郷は窓の外をチラリと見た。
真撰組の面々も、窓の外へ目を
やる。
しかし道にはいつも通りの人混みがあるだけだ。
疑問に思い、西郷へ先を促す。
西郷は外から目を離し、手元へ
目をやった。
「…あたしらは、この国に信用
されてない。
自分で言うのもなんだけど、昔はかなりやんちゃしたからねぇ…。
いつ反旗を翻すかわからない、
つって、怪しい行動をしないか、常に見張られてる。
その中で、当時のことを話すことはある意味綱渡りなんだよ。
私の納得できる答えがない限り、私は答えられない。
あたしにも大切な人間がいる。
それに、私のことを理由に、歌舞伎町にいる元攘夷志士連中の粛清に入るかもしれない。
ここは浄も不浄も飲み込む歌舞伎町。
流れ着いた奴は多いからねぇ…」
そう言って、西郷は笑みを浮かべながら銀時をみた。
相変わらず銀時は面倒くさそうに鼻をほじるだけだった。
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