46人が本棚に入れています
本棚に追加
西郷は腕を組むと、目を伏せ、
黙り込んだ。
そんな西郷の様子を、真選組三人は少しの緊張と共に窺う。
「…いいだろう」
突然の声に体を揺らす。
西郷は腕を解いて、顔には笑みを浮かべていた。
「あんた達を信用しようじゃないか」
その言葉を待ってましたとばかりに近藤の目に涙が浮かぶ。
「…かたじけない、西郷殿」
「恩に着る」
「ありがとうございます。
西郷さん」
「今回のことで何かあったときは俺達も加勢しやす」
西郷は沖田の言葉にガハハと笑った。
「相手は幕府だってのにどう戦うっていうんだい」
沖田はそれでも、すこしムキに
なりながら言った。
「…それでも、何かありまさァ」
「気持ちだけもらっとくよ」
西郷はそんな沖田を優しげにみつめ、ひとしきり笑うと、どこか懐かしむように目を細めた。
「さて、なにから話そうか…」
万事屋の格子窓の外では、夕暮れを告げるカラスが鳴いていた。
最初のコメントを投稿しよう!