第1章

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西郷は腕を組むと、目を伏せ、 黙り込んだ。 そんな西郷の様子を、真選組三人は少しの緊張と共に窺う。 「…いいだろう」 突然の声に体を揺らす。 西郷は腕を解いて、顔には笑みを浮かべていた。 「あんた達を信用しようじゃないか」 その言葉を待ってましたとばかりに近藤の目に涙が浮かぶ。 「…かたじけない、西郷殿」 「恩に着る」 「ありがとうございます。 西郷さん」 「今回のことで何かあったときは俺達も加勢しやす」 西郷は沖田の言葉にガハハと笑った。 「相手は幕府だってのにどう戦うっていうんだい」 沖田はそれでも、すこしムキに なりながら言った。 「…それでも、何かありまさァ」 「気持ちだけもらっとくよ」 西郷はそんな沖田を優しげにみつめ、ひとしきり笑うと、どこか懐かしむように目を細めた。 「さて、なにから話そうか…」 万事屋の格子窓の外では、夕暮れを告げるカラスが鳴いていた。
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