第1章

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真撰組屯所。廊下を、二人の男が歩いていた。 服装から、隊長以上の位だとわかる。 「総悟。この間しょっぴいた例のテロリストどもの件、調べついたか」 「うっせーよ土方。 人にやらせといて偉そうなんだよ土方」 「偉いもーん!!俺はお前の上司だもーん!!」 「チッ まあ調べましたよ。 いつも通り、ただの下っ端の集まりっぽかったですけどねィ」 「てめぇ今チッて言っただろ!! チッって!! …まあ良い。お前の悪口はいつもの事だ。 付き合ってたらきりがねぇ。 で、《ぽかった》ってどういう事 だ」 「へい、まあ。 実は一人、妙なのが混じってたんでさァ」 「妙なの?」 「黒田左衛門。かつて攘夷戦争を戦い抜いた猛者でしてねィ。 今は山で畑仕事して、隠居生活をしている……筈、だったんですがねィ」 沖田はここで言葉を切り、実に解せないという顔で眉を潜めた。 「若かったんでさァ」 「は?」 「奴は現在80歳。それなのに見つかった時、皺もなけりゃあ髪も黒い。良くて30代前半って感じでさァ。 本人だってのもDNA調べて過去の写真見付けて、やっとわかったんですぜ。 細胞やらなんやら調べても、整形ではないそうですし、まったく妙なこってィ。 ちなみに一週間前に、家族から捜索願いが出されてやした」 土方は絶句した。 「若返った?んな馬鹿な。 ファンタジーじゃねえんだから」 「今奴は、突入時の戦闘で追い詰められ、自害しやしたが、一命はとりとめ、現在病院で意識不明の重態でさァ」 「早急に調べる必要があるな。 今回の件はどうやら、ただの攘夷浪士の会合では済まないらしい。 お前も他言無用だ。どうもキナ臭い。近藤さんには俺から言う」 「で、どこから調べやすか」 「まず、黒田が失踪してからの足跡を辿れ。それから失踪直前、誰か奴の周りをうろちょろしてないかを調べろ」 「ザキは?」 「今別件を頼んでる。明日には片がつく。 それまでは俺達だけで調べる」 「了解しやした」
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