第1章

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沖田がいなくなり、土方は近藤の部屋へ向かっていた。 すると途中、山崎が歩いて来るのが見えた。 「あ、土方さん」 「おう、山崎」 「今副長に例の件について報告をしに行こうとしていたのですが、何か用事でも?」 「ああ。近藤さんに報告に行く途中だ。 例の件にも関係があるかもしれねぇ。お前もついてこい」 「わかりました」 そうして廊下を山崎を連れ立って歩きだす。 しかし、先程から頭の中を廻っているのは沖田から得た情報。 若返ったというのは取り敢えず置き、気になったのは《失踪》という単語だった。 というのは最近、元攘夷浪士の失踪が相次いでいたからだった。山崎に調べさせたのは、直ぐに見つかるだろうと踏んでの事だった。 山崎を一ヶ所に縛り付けるのは効率が良くない。 元々、攘夷浪士を辞めた奴が、もう一度攘夷を始めるのはあまり珍しい事ではない。 志を捨てきれず、復帰する奴がいるからだ。 だが最近は、(以前と比べて、ではあるが)あまりに多かった。 しかも、今回は攘夷(志士)が特に。彼らはそこいらのチンピラに比べてかなりのレア物だ。志士が一人いるだけで、その攘夷組織の発言力は驚く程増す(あまりに下っ端ではない場合だが)。しかもここまでの高齢で金の工面や情報提供などの裏方ではなく表舞台に立つなど、尋常ではない何かが起こったとしか考えられなかった。 若返った事と、何か繋がりでもあるのだろうか。 そうこう考えている内に、近藤の部屋の前まで来ていた。
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