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土方は膝を立てながら座るような格好で、礼儀通り一声かけて襖を開けた。
見るとどうやら書き物をしていたようだ。
「取り込み中だったか?
近藤さん」
「いや、平気だ。で、何かあったのか」
「ああ。実はどうもキナ臭い案件があってよ。近藤さんに一応報告にと思ってな」
「キナ臭い?どれ、話してくれ」
土方は沖田の報告をそのまま話した。
すると、驚くべき言葉が返ってきた。
「乙姫の一件に似てるな」
「乙姫?ああ、あの爺婆だらけにしようとした婆さん。似てるってどういう事だ?」
「ん?いや、質的には逆だが要は年齢を変えたということだろう?年をとる為の箱があるなら、若返る為の箱があってもおかしくないだろ。
実際俺は、一旦年取った爺さんになったがこうして《戻った》わけだしな。
だが、身体が戻っても攘夷活動に参加しようなんて80代の爺さんが考えるか?」
「わかんねぇぜ。実際戦争に参加した奴らは勝利の為に何人もの戦友の命を捧げ、更に自分まで身を賭したのに最後には守っていたクニにこそ裏切られたんだからな。
また戦えるとわかった時、どんな行動にでるか…」
「うむぅ…」
「取り敢えず、攘夷戦争参加者を一通り洗ってみようと思うんだ
が…」
「それは早計じゃないか?」
近藤が少し眉をさげてたしなめるが、土方は首をふる。
「いや、可能性は早目に潰しておくべきだ。
どっちにしろ、攘夷志士を本格的に調べるとしたら本人に聞き込みに行かなきゃなんねぇ。
資料で調べらんねぇ理由、近藤さんだって知ってんだろ」
「ああ…」
実際、攘夷戦争の記録は当時がかなり混沌としていた事を差し引いても驚く程少ない。
当時、攘夷派についていた事を隠したい一部の高官。
他にもかなりの裏金が動いていたらしい。
だから攘夷戦争については教科書に最低限必要な資料しか載っていない。
それも殆どは改竄の嵐だ。
実際、教科書に書かれている歴史を信じる人間はあまりいない。
「今回ばかりは志士共に話を聞くしかない。
しかし奴等が簡単に教えるかどうか…。話は聞けても嘘である可能性がある。
しかも弱い下っ端じゃあ得られる情報も限られてくる」
「現在攘夷に興味がなく、ある程度事情に精通していて、条件によって喋ってくれそうな奴か…」
「万事屋の旦那なんかどうでしょう」
ビクッ
「…山崎。お前いたのか」
「ずっといました!!」
山崎は涙目になった。
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