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少年は大男のニヤついた顔をいちべつすると、何も言わずそのまま向きを変えて扉を開いた。片手には先程もらった報酬がしっかりと握られている。
「気ぃーつけてな。」
カチャ
大男が言葉を発したのと、少年が部屋から出たのはほとんど同時だった。
「あいつは化け物だな。」
大男は口に笑みを浮かべながら少年が置いていった深紅の鉱石を眺めた。
少年は足早に店から出ると、報酬をそのまま手に持ったまま狭い舗装されていない道を歩いていく。
「依頼主…」
少年はどうやら依頼主を探しているようだった。資料には間違いなくこの寂れた最悪な路地裏の一軒を指し示す地図が載せられており、依頼主は写真で見てもまだ幼いようだった。
「こんなところに…」
少年は足を進める。
タッ、タッ、タッ
と、背後から軽快な足音が聞こえてきて、少年は立ち止まった。
「いっただきぃ!」
声はまだ若く、足もさほど速くはない。避けようと思えばよけれたはずの行動を避けず、少年はそのまま報酬を奪われた。
手には空しい感触。
「子供は哀れだ…」
少年は呟いた。と、同時にその場から姿を消した。
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