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はぁ、はぁ
大きく肩で息をしながら子供は笑顔を見せた。
「やった。これでやっとお金がたまった。」
笑顔を見せて、子供は少年から奪い取った報酬の袋をじゃらじゃらと鳴らした。
しばらく袋を揺らしてから、この場を離れようと向きを変える。そこまではよかった…
「子供という生き物はどこまでも恥知らずで、バカなんだな。」
「お、おま、え、なんで。」
「生憎とこれが仕事なんだ。」
「へ?」
何も理解していない子供をよそに少年は子供の手から報酬袋を奪い取った。それには慌てたのか子供が必死に取り替えそうとしてくるが、背の高い少年の手からそれを取るのは至難の業だ。
「返せよ!」
「これは僕のもののはずだ。」
「それがないと!」
子供は今にも泣きそうな顔で少年に懇願した。そんなことには気にも止めず報酬袋を革の鞄に直して、少年は上から子供を見下ろした。
「リーリエ・グリュックだな。」
少年の顔にはもはや子供への慈悲の色すら見えない。冷たく鋭いその瞳が小さな子供をすくみ上がらせた。
「僕はお前を見つけるためにわざと金の入った袋を野ざらしにしていたんだ。」
冷たい声が響く。
「なんで…名前知ってるんだよ。」
子供が微かにそう言ったのが聞き取れた。酷く怯えているようだった。
少年は鞄から依頼の資料を取り出すと腰を下げて子供と視線を合わせた。
「依頼だ。」
短い返答。
子供は目を見開いた。
「来てくれたの?」
それはまるでヒーローが自分の前に現れたような、喜びの感情が混じったような言葉だった。
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