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乙月の兄であり、学園の保険医でもある彼は“虎の何かを知って居る”という事に繋がるのではないだろうか。
(卑怯な手段だって事は解ってる)
そんな事は、良く解って居る。
けれど、今まで彼が見せようとしなかった気持ちを俺に見せるほどに、虎の現状は切羽妻ってしまって居るのだ。
キュッと唇を噛みしめ、俺は虎の胸の中からもぞもぞと顔を上げると、その青味がかった綺麗な瞳を、下から見上げた。
「虎、虎は……救われたい?」
「叶芽が居ないなら、救われたくない」
「俺が居るなら、救われたい?」
その俺の問いに、若干驚くような色を見せ、虎はゆっくりと、けれど確かに首を縦に振った。
だとしたら、俺は――決意をしよう。
虎を失う覚悟も、何かが変わってしまう覚悟も。
この、一番に大切にしている思いを胸にしまってしまう彼の為に。
俺は、覚悟をしよう。
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