第一章

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あれは、1ヶ月くらい前のこと。 私は放課後の廊下を一人歩いていた。 オレンジ色の夕暮れが廊下を染める。 私は夕暮れが大好きでつい足を止め、窓からの景色に見惚れてしまった。 ―――――今思えばあそこで止まらなければよかったのかもしれない。 夕暮れの景色に見惚れているとどこからか声が聞こえた。 人はどうして、頭では行ってはいけないとわかっているのに身体が動いてしまうのだろう。 声が聞こえたのはだれもいないはずの空き教室。 ドアの前にたち、ドアに手をかけたときにドアについている小窓から中を見て目を見開いた。 「はぁっ…あっん…なおっ…き…」 「はぁはぁ…み、あっ…」 さっき聞こえた声でだれかがこういうことをしているのは予想していた。 だから、その男女が神埼美亜と私の彼氏の杉浦直樹(スギウラナオキ)だということに驚きを隠せなかった。 私とは一度もそういうことをしたことがない直樹。 今まで「怖いから」っていう理由で拒絶してきたから、我慢できなかったのだろう。 だからって他の女にその性欲を解消させるのはいくらなんでも酷すぎだ。 私はその場から静かに離れた。どうしてこんなに冷静でいられるのだろう。自分でもよくわからなかった。 でも一つわかったことは、「直樹は美亜と浮気をしている」ということだった。
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