1人が本棚に入れています
本棚に追加
まだ肌寒い春の風が、音を立てて流れていく。
白い雲が足早に通りすぎ、桜の淡いピンク色が真っ青な空に溶けていた。
屋上で寝転んでいた僕の視界に、ピンクと青と君の不思議そうな顔が飛び込んできた。
「なにしてるの?」
ただでさえ風が強いのに、屋上にいたら制服がバタバタと持っていかれそうに、なびいていた。
君は前屈みになるから、後ろから見たらスカートの中が丸見えなんじゃないかと、ボーっと思った。
少し横になるつもりが、どうやら寝ていたらしい。
「別に」
そっけない返事。
そうじゃなくて、もっとなんか…。
「あっそう」
言葉を付け足そうと口をついて出る前に、君が遮る。君もそっけない返事。
君はスッと顔をそらす。
思わず体を起こした。
「そろそろ帰る?」
また風が強くなって、バタバタとうるさい。
君は髪とスカートを押さえて、大きめの声で言う。
僕は了解の意を込めて、立ち上がった。
最初のコメントを投稿しよう!