0人が本棚に入れています
本棚に追加
/30ページ
人類の存亡をかけた魔物との大戦が勇者によって終止符が打たれてから月日が経ち、人々から大戦の記憶が薄れかかった頃の話。
全てが元に戻りつつあった。
今や町の外を異形の者どもが闊歩する事は無い。
平和そのものだ。
そして人々が魔王と言う強大な存在に怯えるあの大戦時代を忘れ始めるのは意外に早かった。
それを人間の強さと言うのか、はたまた愚かさと言うのか。
どちらにせよ、人々は明日に絶望することなく生きている、今のところは、そして誰もがこの平和が続くと思っている。
きっとそうなるはずだろう、否、そうなるべきなのだ。
勇者と呼ばれる者が魔王を打ち倒し、世に平穏がもたらされ、それが続く。
それがあるべき筋書きなのだから。
ただ、そんな世においても剣を手放すことが出来ない者たち、手放す訳にはいかない者たち、手放したくない者たちは居る。
さて、そんな者たちの中の一人、しがない傭兵、リカード。
彼は大戦時代と変わらず未だに己の明日の糧のために剣を振るっている。
ただ大戦が終わってからは、酒場を酔っぱらい達を鎮圧したりする用心棒の真似や、ただ剣を持ってぼーっとしてるだけの警備兵の真似をしたり、畑で剣を振るって大戦時代の生き残りの雑魚同然の魔物を退治するだけの仕事しか来ないが。
でも、彼はそれで良いと思っている、戦いに飢えてる訳でも無いのだ、飯にありつければそれでいい、それは大戦時代から変わってないようだ。
最初のコメントを投稿しよう!