事の始まり

2/16
前へ
/74ページ
次へ
俺の祖父は、日本で5本の指に入る金持ちだ。財閥と言っても差し支えないだろう。 やたらでかい豪邸に住んでるし、使用人雇ってるし、別荘なんていくつ持ってるか分かりゃしない。 だからといって、俺や親戚筋は別段金持ちって訳でもない。祖父だけが金持ちなのだ。苦労して手に入れたものを、人に与えたくないとかなんとか…。 言い方が悪いかもしれないが、そんな祖父は親戚中から嫌われている。恩恵を受けられなかった祖父の身内(嫁とか娘とか)にも、だ。 そんな祖父が今、病気で床に伏せっているらしい。 祖父の侍医からそんな電話が来たとき、俺はかなり驚いた。 実を言うと俺は、結構祖父に可愛がられていた。孫で一番可愛がられてたのは多分俺。自惚れとかじゃなく本当に。 そんな俺だからこそ、祖父のタフさは重々認識していた。だから祖父が危篤だなんて、考えたこともなかったのだ。 「……で…、聞いてますか?」 「あっ、はい。聞いてます」 侍医からの電話なんかろくに聞いちゃいなかった。ただ、祖父が何故か自宅に親戚筋を全員呼ぶという話だけは、侍医が何度も言っていたから覚えた。 電話を切る直前も、来週絶対に祖父の家に来るよう念を押された。そんな重要なのか…?
/74ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14人が本棚に入れています
本棚に追加