奪われた日。遺された日。

2/10
前へ
/671ページ
次へ
久しぶりに父さん母さんと、弟のマークと一緒に家族でゆっくり過ごせる日だと思っていた。 マークの誕生日だ。 その買い物がてら、城下街を離れた森の方へ散歩にきていた。 俺もマークも楽しみにしていた。 父さんは後ろから、ゆっくり俺達の様子を見ながらにこやかにしていた。 マークは楽しげに駆け足で先に行く。 「急に走ったら危ないわよ」 母さんが注意してるのに。 「大丈夫だよっ」 と、無邪気に。前も確認せずに走っていく。 その時、マークが大男にぶつかったのが見えた。 瞬間、マークが大きく弾かれたようになった。 「マーク!」 母さんはマークに駆け寄って覆い被さった。 何がおきたのか分からなかった。 マークを弾いたものは、大きな刃物だったんだ。 「エリザ、マークっ」 父さんが後ろから駆けてくる。 「なんてことをっ」 母さんが大男を睨みつける。 「何でだ。当たってきたこいつが悪いだろ」 「確かに子どもの不注意はありますが、それでこの仕打ちなのですか」 「わかったよ」 「何がです」 「お前も同罪ということがなぁ」 大男は笑っていた。 両手剣を振り下ろした先は。 「イヤァアっ!」 「な、母さんっ、マーツっ」 母さんも赤に染まっていく。血溜まりが広がっていく。 「そんなっ」
/671ページ

最初のコメントを投稿しよう!

192人が本棚に入れています
本棚に追加