奪われた日。遺された日。

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「くっそぉおっ!!」 父さんは大男に向かって行く。 何も武器とか持ってないのにどうするんだよ。 「ダメだ、父さん!」 「父親か? ウザいな」 「このぉお!!」 雄叫びをあげて向かう父さんに大きな剣が振り下ろされた。 鮮血が飛び散るのが見えた。 「と、うさん、父さんっ」 「マーツ、お前は、逃げろ」 「そんな……」 そんなの、嫌だ。 どこに逃げろも。家に一人だけ逃げ帰ってどうしろというんだ。 いきなり、こんな事でみんなを傷付けられて、俺だけ逃げるなんて。 そんなことするのは絶対に嫌だっ。 「うぐ……」 怖い。でも、逃げるわけには行かないだろ。 「ああ、まだ邪魔な虫がいるのか」 「ウワァアアァ!」 俺も斬られるだろう。 もう、ここで死ぬんだろうな。 それでも、こうでもしないと後悔してしまう。 せめて、一傷でもあわせてやりたい。 父さんと母さん、マークの仇だっ。 「や、やめて! 護衛兵、あの少年を止めてあげて」 「はっ!」 女の子のような声が聞こえて、俺は二人の兵士に身体を拘束されてしまった。 「な、なんで。止めるなっ、家族の仇なんだっ」 「駄目だよ、だからって自分も殺されに行くなんて、駄目っ」
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