奪われた日。遺された日。

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「スノー国が王子、ルナールが命じます。これ以上の争いは僕の目の前ではさせません」 「そんな、じゃあ俺はどうすればいいんだよっ。父さん、母さん、マークは」 「城内の医師に頼めば、まだ間に合うかもしれません」 「生きてるの? 助かるの?」 「わかりませんが、頼んでみます。命は今一時が大事です。直ぐに運びましょう。ですから、君も無謀な真似はやめて、ひとまず僕と一緒に城内へ」 「……わかりました」 「そこの兵士はギルドからの委託兵ですね」 「だからなんだ」 「間借りなりにも、スノー国の兵士の服を、罪のない人民の血で汚したこと、重大な処罰に価します。今は命が優先ですから、後ほど城内の兵士に伺いさせます。名前はなんというのですか」 「おいおい、悪いのは俺じゃないだろう。こいつらが子どもをきっちりと見てなかったからだろう。名を名乗る必要はない。用があるなら、ギルドまで来ればいい」 そうやって去っていった。 「そんなっ、あいつを今すぐ拘束してくれよ、厳しく処罰してくれよ」 俺は拘束されて、あいつがそうならないなんて、おかしいだろ。 「ごめんなさい。でも今は君のご家族が心配でしょう。ちゃんと助かるか確認してあげないと」
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