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鏡の前で王子の背中から身体を抱く。
俺も王子に密着して、刺激を求めている。
快楽と愛を求めるままに身体を擦り寄せ、悦びに浸る王子はとても綺麗で。
俺も王子に愛欲をぶつける。
愛を求め、言葉にしあう。
湯船に入らないうちにのぼせそうになっていた。
「ルナール、愛しています」
「うん。僕もマーツが好き。愛してる。……でも、僕は、マーツを愛していい資格なんてないんだよ。マーツに対して正当に付き合えないのに」
ああ。なかなか愛してると言ってくれなかったのは、ルナール王子にスノー国の王子という枷がはめられているからか。
人から与えられた生活の中だから、決められたものから逃れられないのかな。
まだ愛してるって言葉を俺に向けることさえ迷っているのか。
「人を愛する気持ちに資格なんていらないですよ。それにルナールに愛されて俺はとても幸せです」
優しく、ゆっくりと、それでも確かな意思の強さを伝たく、笑顔で返す。
すると王子は涙を流し、笑みを浮かべた。
「うん、うん。マーツ、愛してる」
「こうやって裸でいる時、肌を重ね合える時間くらい、二人っきりで居られるときくらいは、心も裸でいてほしいっ言ったのはルナールですよ」
「うん」
「愛してるの言葉が嘘でないなら、ルナールも肩書きとか繕いは忘れて、俺に心をゆだねてください」
せめてこの時だけは取り払ってあげたい。
違う。
俺自身が王子にそうあって欲しいと願っている。
俺を愛していると本音で思ってくれている王子のことを欲している。
欲に溺れてしまう。
「うん……そうだね」
王子は自分の両手で顔を覆ってしまった。
どんな顔をしてるんだろう。
「さあ、湯船に入りましょうか」
「うん」
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