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周りの様子を観察しながらと小声で言われたので、
「そうですね」
と笑ってしまった。
そんなふうに王子の部屋に帰ると、王子用に部屋着と公務用の服がチェストの上に用意されていたので、手間が省けて有難いと胸を撫で下ろした。
「王子、先ずは部屋着に着替えていてくださいますか。私の服では流石に申し訳ないですからね」
「わかったけど、その前に」
っと、袖をくいっと掴まれる。
大体言いたいことは分かる。
「申し訳ありませんが、王子。ひとりで着替えてくださいね。私はその間に食事を頼んできますから」
「フェアラ姉様みたいに心読んだの? ……もう、わかったよ」
と諦めてはくれたみたいだが残念そうだ。
そこが可愛いと思ってしまうのだけど。
「では厨房へ行ってきますね」
「早く帰ってきてね」
顔を近づけて見つめてきた。
「ええ」
おもわず顔が崩れて笑みを返してしまう。
幸せだ。
とはいえ、気になることもあるから、先に確認しておきたいこともある。
部屋から出て、厨房へ向かう。
その間も行く使用人達は俺をちらりと見てくる。
暫く建物には、兵舎か食堂だったから王室のある場所に入るのをやめていたからな。
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