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特に王城に入るまで禁じられてはなかったが、俺はそれがいいと思っていた。
会いたいけど、それは罰ではない。
それに会えばまた苦しくなるだろうからと思っていた。
今はどうだろう。
顔を合わせば幸せだ。触れ合い、愛し合えるのは幸せだ。
それでも、幸せだけでない。
切ない気持ち、苦しい気持ちも持ち合わせている。
それも踏まえて、王子を愛さなければ、俺が離れれば、王子を壊してしまう。
傲りかとも思うが、愛しぬく覚悟を決めなければ。
そうだな。
そう思いつつたどり着く。
相変わらず厨房はせわしい。
「すみません! 王子の食事をお願いします!」
朝食を頼む。
「おーい」
と、料理長の声がするのでそちらを見ると、
「まぁまぁ早い出所だったんじゃないか、よかったなぁ」
と言いながらガハハと笑うから、
「ええ。あ・り・が・と・う、ございます」
と作り笑いを込めて語気を上げて返した。
まあ、料理長はこれで労ってるのは分かるから。
口が悪いだけで。
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