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遅い朝食をゆっくりと王子のペースに合わせていただく。
幸せを噛み締めながらも、脳裏の片隅にトマスの事が過ぎる。
辛い思いしてないだろうか。自暴自棄になってないだろうか。
トマスも結局俺が振り回したから。
食べたらトマスの様子を見るのと、王子に対応を考えてもらわないとだ。
王子はどこまで許してくれるだろうか。
「マーツ、考え事してる?」
「ええまあ、色々考えてないとですから。でも先ずは王子がしっかり食事をとられることが先ですから」
「うん、ありがとう」
食事をゆっくりいただくことにした。
王子が物欲しそうに口を開けるので、半分にカットされた葡萄を口にほうり込む。
「キス、してもよかったんだよ」
「まだですよ」
拗ねているな、目尻を少し歪ませたから。
「僕、マーツを待ってたのに、ステイされるのは悲しいな」
「私も、甘やかし倒したいけれど、今日はやる事があるから、申し訳ないです」
「わかったよ。僕にそう言えるのも、逃げ出したり出来るのは、そういないよ」
「う、すみません」
反省だ。王子を困らせたり悲しませたりばかりなのは、確かにそうなんだ。
「まあ、マーツが僕の事嫌いじゃないなら、振り回されてもいいよ。」
爽やかな朝食は久々だった。
王子が食べ終わる頃に話を持ち出す。
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