プロローグ

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先に述べておこう。 今から始まる物語は、とてもとてもありきたりな物語だ。 ありきたりというのは、普通の感覚で捉えて、「よく見る設定だなー」って思われてしまうような、そんな感じだ。 王道とか。まさにありきたり。 王道的なもので物語の展開がとても素晴らしくて、しかもさくさく進んで、さらにキャラクターに魅力がある。 ありきたりだけど、大ヒット級だ。 小説、漫画、アニメ、映画、さまざまなメディアで活躍する可能性を秘めている。 王道だから、できることだ。 だから、ありきたりっていうのは悪いことじゃない。 むしろ、ありきたりっていうのは良いことかもしれない。 良作になるのか駄作になるのか。 まあそれは、物語を紡ぐ神様の裁量しだいだ。天秤を傾ける羽しだいだ。 ――と、ありきたりの擁護と王道の絶賛を行ったが。いや、別に今からスタートを切る物語がありきたいながらも王道的で、しかもとてもおもしろい、なんて言おうとしているわけではない。 ただ、この物語がありきたりであるということを述べて、するとなんだかありきたりというのが悪く見えちゃうかもしれない、という配慮からこんなくだらない弁論を行ったという、ただそれだけのことだ。 ただそれだけの、土台作りだ。 ――では、そろそろ、その王道的(ありきたり)な物語を始めよう。 彼らの日常的(ありきたり)な物語、を。
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