理想の実現

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 Z氏は目を覚ました。  夢を見続けることはできたが、朝日と共に人の声で起こされた。 「懐かしい夢を見たな」  Z氏は子供の頃の夢を見たおかげで、気分がよかった。両手を組み背筋を伸ばすと、軽く朝の体操をする。  Z氏は現在、夢とは少し違うが、大きな家に住んでいた。ここには、大勢の仲間達と金を支払ってくれる人もいた。自分に科せられた仕事はあるが、優雅であることにかわりなかった。  それに、今日は仕事は休みの日である。雑誌を読んでもよっかし、表に出て自由に運動してもよかった。だが、今はそんな気分にはなれなかった。それも、子供の頃の夢をみたせいだろうか。  Z氏は部屋に置いてある呼び出しのブザーを鳴らして、人を呼んだ。そして、やってきた人にペンと葉書を頼んだ。  呼び出された人は頷き、別室からペンと葉書を持ってきてくれた。律儀にZ氏が葉書を書き終えるのを待っていてくれた。その方が、彼の方も都合がよかった。葉書を書き終えたあとで、もう一度、呼ぶのは手間が掛かる。  文章は短く自分の近状を伝える内容だけにした。 「じゃあ、これをお願いします」  Z氏は入り口で待ってくれていた人に葉書を渡した。  Z氏から手紙を受け取った看守は葉書の内容に問題がないことを確認すると、葉書を郵送する為、刑務所の看守室に向かった。
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