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Y氏は目を覚ました。
「すっかり、忘れてしまっていた」
少年の頃から、すっかり、歳をとってしまったY氏は久々に懐かしい子供の頃の夢を見た。そして、夢の中で、友達と交わした約束を思い出した。
「あれから、もうどれほどの年月が過ぎただろうか」
Y氏は子供の頃の記憶を追想しながら、現在に至るまでの年月を数える。あれから、三人は家々の事情で各地に散らばってしまい、再会することはなかった。今では何年かに一度、形式の手紙を送るという程度の間柄になっていた。
「おい。執事はいるか?」
Y氏は呼び鈴を鳴らして、自分の執事を呼び痩せた。すぐに、Y氏専属の執事がやってきて、彼は深々と主人であるY氏に頭を下げ、朝の挨拶をする。
「おはようございます。旦那様」
「ああ。おはよう。ところで、すまないが、年明けに届いた年賀葉書。それを持ってきてくれないか?」
「年賀葉書をですか?どうして、また?」
毎年数千通の手紙がY氏のの元には届いていた。会社の関係者や、融資をしている人からの挨拶。当然、その中には旧友の年賀葉書も入っていた。
いつも仕事が忙しく、返事を書くのが疎かになっていたY氏であるが、夢を見たのは何かの暗示かもしれなかった。Y氏は筆をとり、懐かしい友に近状を書く。
あれから、どれくらい努力をしただろうか。Y氏は小さいながらも会社を持つことができた。時の運、自分の実力も合わせ会社を成長させてきた。今では昔、夢みた屋敷を持つことができた。
自慢する訳ではないが、友達があれからどうなったのかも気になる。だから、こうして、自分から成果を発表してみることにした。友達も夢を叶えていることを祈りながら。
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