一両目 出会い

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その間曳野は鉄道雑誌を熱心に読んだり、パソコンで何かの音を聴いたり(ヘッドホンで聴いているのでこちらには聴こえない)、スカイプで誰かと話したりしている。 「○○系・・・、××型・・・、モハ・・・、カーブ・・・」 『モハってなんだろう?』 「やはりそうか。その線だな」 『電車の線のこと?』 知識の無い私にも分かった。 この人はさっきから仕事をしないで電車の話をしている。 『サイテー!』 心から軽蔑した。 曳野はパソコンを閉じた。 「今日はもう帰っていいよ」と言うと、事務所を出された。 「もう終わり?」 要綱に書かれたとおりの仕事内容だが、探偵関係は全く触れられなかった。 これはもう完全家政婦扱いだ。 外で呆然としていると、曳野も出てきた。 車掌の帽子を脱ぎ、上着だけ皮ジャケットに着替えて、大きなバッグを手に持って「また明日」と出て行った。 あのバッグには沢山カメラが入っていることは気付いていた。 『まさか電車の写真を撮りに?』 本当にここで働いて探偵修行になるのかととても不安になった。
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