二両目 記憶を探して

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◇ 翌日鈴木さんと一緒に栃木へ行くことになった。 私も同行を許されたので張り切って車に乗った。 そして今日もハミちゃんがいる。 ハミちゃんは助手席に座っていた。 『助手席は助手のためにあるのではないかい?』 私は不満だった。 曳野の顔を見たが、黙っている。 この状態になれているのか、疑問にも思っていないようだ。 仕方なく後部座席の鈴木さんの隣に座った。 曳野は鈴木さんに声を掛けた。 「鈴木さん、こまめに休憩はとりますが、体調が悪くなったらすぐに言ってくださいね」 「はい。ありがとうございます」 ハミちゃんが曳野に訊いた。 「で、どこへ行くの?」 「今から行くところは栃木県にある会沢線(あいざわせん)という廃線だ」 「廃線!?」 「ああ。昨日の鈴木さんの話から、ここじゃないかなと見当をつけた。合っているかどうかはこれから確認するしかない」 しばらくドライブとなった。 目の前の二人を見ていると、顔の距離が近くて恋人同士のように見える。 私は目にいれないように出来るだけ外の景色を眺めた。
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