二両目 記憶を探して

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山の中の線路跡を車で辿って、それらしき廃屋を見て回った。 やがて鈴木さんはある家を見るなり、「ああ、ここです」と喜んだ。 線路脇に建つボロボロの2階建て。 50年間この地で風雪に耐えた風格を漂わせている。 「見付かってよかった」 私達も喜んだ。 鈴木さんは不思議がった。 「でもどうしてあの話で分かったんですか?」 「まず一つ目の理由。それは鈴木さんが今まで電車に乗って探してきたのに見付からなかったと言ったことからです」 「そうか。廃線では見付からないはずだ」 「そうです。鈴木さんが候補を減らしてくれたから助かりました。栃木の廃線は3つ。会沢線(あいざわせん)、矢板線(やいたせん)、東野鉄道(とうやてつどう)です。矢板線は昭和34年に廃止。昭和39年生まれの鈴木さんが見るはずない。だから除外できます。東野鉄道は昭和43年廃止だが、農作物の輸送用だからこれも除外。残ったのが平成9年に廃止となったこの会沢線だけです。貨物が白い砂利を運んでいたという記憶から、かつて石灰石を運んでいた会沢線に間違いないと思いました。白い砂利とは石灰石だったのでしょう」 『鉄ヲタ、スゴーイ!!!』 私は素直に感心した。
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