一両目 出会い

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校長は悩んでいる私に勧めた。 「お給料が出て、探偵修行が出来るのはありがたいことよ。私なんて、見習いの頃は無給で働いたんだから!」 校長は若かりし頃、探偵になる為、飛び込みで入った探偵事務所に無給で雇ってもらい、ノウハウを身につけて独立したことが自慢だ。 本当に最後まで経費自腹の無給だったそうだ。 校長は強調した。 「私だってその事務所で仕事が無いときは掃除ぐらいしたわ。それが見習いというもの。逆に考えれば、炊事、掃除、洗濯でお給料が出るのよ!」 貯金のない私は校長のように自腹で修行などできない。 給料が出る。 それだけで妥協して面接を受けることにした。 「16歳でも面接してもらえますか?」 「私から電話しておくから大丈夫よ」 校長は太鼓判を押した。 その効果か、無事書類選考を通った。 そして今こうして地図を頼りに曳野探偵事務所に向かっているところだった。 歩きながら再度仕事内容を考えた。 あの内容だから誰も応募しなかったのだろう。 だから校長も私が受けるように強く勧めたのだ。 きっと応募者は私だけに違いない。 合格は決まったようなものだ。 これで落とされたら笑っちゃう。
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