三両目 ネットの恋人

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今日は待ちに待った初給料日だ。 私は朝から緊張して給料を待った。 しかし曳野は「10時に来客があるから、来たらお茶を淹れてくれ」と言ったあとパソコンに向かってしまい、渡す気配がない。 ついチラッチラッと曳野の顔を見ていると、視線に気付いた曳野が、「ああ、これね。はい、ご苦労様」とようやく給料袋を渡してきた。 「ありがとうございます」 恭しく受け取った。 使い道はまず母にいくらか渡す。 そして自転車を買おう。 あとは貯金だ。 でも洋服も買いたいな。 そんなことを考えていたら、“♪ チャラチャンチャララン、チャララアラー、チャラランチャララン、チャラチャンチャンー”とインターホンが鳴った。 雰囲気にそぐわないこの音は絶対に変えるべきだ。 あるいは外に聴こえないくらいの小さな音にするか。 曳野は顔を引き締めるとドアを開けた。 本日の奇特な依頼人が入ってきた。 若いのに地味で暗い感じの女性だ。
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