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「メールでお約束した矢内(やうち)ひばりです。よろしくお願いします」
「曳野です。どうぞ」
矢内さんは少しおどおどしながら入ってきて、キョロキョロと事務所内を見ている。
多分『ここは信用できるのか?』と疑っているのだ。
鉄道グッズを見てそのまま帰るんじゃないだろうかと心配したが、女性は勧められたソファに座った。
ソファが電車シートでできていることも気付いていない。
きっと緊張して目に入らなかったんだな。
私はお茶を出すと同席して話を聞いた。
「私には恋人がいます。この人です」
女性は曳野に写真を見せた。
特急電車をバックに男性車掌が写っている。
「この写真は彼が送ってくれたものです。彼は四国で車掌をしています」
「確かに後ろにある電車はJR四国の特急電車で、着ている制服も四国のものですね」
鉄ヲタの曳野は確信を持って言った。
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