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「どうして教えてくれなかったんですか?私も手伝いたかったです」
「以前偉そうに見抜けるようなことを言っておきながら、騙されたことがちょっと恥ずかしかったからね」
今回はいつもの直感が働かなかった。
行商列車廃止のニュースと、行商人を探すというシンクロに目を奪われて冷静な判断が出来なかったことは、反省すべき点だと曳野は気を引き締めた。
「土川さんは宅間を見ても知らなかった。しかし宅間は土川さんが行商に来なくなった理由が、自分の姿を目撃したから怖くなって来なくなったのだと思ったそうだ。行商列車が廃止になったからだと言っても信じなかったようだね」
私はとても怖くなった。
自分の知らないところで悪人に目を付けられ、命まで狙われては安心して生活できない。
「土川さんに被害がなくてよかった。僕の調査によって絶対に迷惑を掛けるわけにはいかないと思ったのと、探偵を騙した報いを宅間に思い知らせてやりたかったので、きつかったが3日間意地で張り込んだ」
曳野は嬉しそうに言った。
犯人を捕まえるということは、向こうもこちらを知っているということだ。
しかも今回は殺人犯。
恨みを買って命を狙われることもあるだろう。
この時私は始めて『探偵業って怖い』と思った。
「探偵をやっていて、怖いことってないんですか?」
「一杯あるよ」
曳野はケロッと言った。
気にしていたら探偵なんてやっていられないということだ。
曳野は青ざめた私を見て、「ここでは危険な仕事を請けないから大丈夫。今回は予想外だったけれど」と、明るい声で私を安心させるように言った。
怖がりに探偵は務まらない。
気持ちも行動も常に悪者の上をいかなければならない。
私はひ弱な自分をもっと鍛えなくてはいけないと思った。
第四話 終わり
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