一両目 出会い

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曳野は「まずは洗濯を頼む」と命じた。 『初っ端から洗濯か!』 私はガッカリした。 これで探偵の技術は学べるのだろうか。 といっても入ったばかりで文句は言えない。 仕方なく、『洗濯は洗濯機がするのだから』と自分を慰めて、曳野の後ろをついていった。 曳野は洗濯籠の中にあるシワシワのシャツを指して言った。 「麻シャツはぬるま湯で手洗いね」 「ええ!」 洗濯機に丸ごと放りこむこともできない。 超面倒くさい! 手でゴシゴシと揉み洗いしていると「力を入れすぎだ。汚れはこの洗濯ブラシを使ってこう洗うんだよ」と曳野はわざわざ実演して見せた。 『こだわりがあるなら自分でやれば良いのに!』 半分やけになりながら洗濯を続けた。 手が荒れた。 「終わったら事務所内の掃除ね」 曳野からモップを渡された。 力を使ってモップ掛けをした。
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