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家に着いた。
「おかあさんはいるのかな」
「いえ。仕事に行っています」
今日は心配をかけないように仕事で遅くなると連絡してある。
母は時給がよい深夜に弁当工場で働いている。
朝帰ってきて仮眠をとると、近所のそば屋へ働きに行く。
今はいないはずだ。
「でも部屋に明かりが点いているよ」
「あれは防犯で点けているんです」
私が降りると車はゆっくりと闇に消えていった。
運転する曳野の横顔が疲れていたことに気付いた。
私の独断行動によって却って迷惑を掛けてしまったと反省した。
家に入ると母が目の前にいたので驚いた。
「ワッ」
「お帰り。遅かったわね」
「遅くなるってメールしたでしょ。仕事は?」
「顔を見るまで心配で休んじゃったわ」
「やめてよ。これぐらいで仕事を休まれたら、こっちも仕事に専念できないじゃない」
親心など分からない私は母にきつく当たってしまった。
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