4人が本棚に入れています
本棚に追加
「とりあえず…帰るか、家族だって心配してるだろうし」
俺は教師の話が終わった後に葉月と裕真へと呼び掛ける。
「ああ、帰るか…」
「そうだね、りゅーくんの言う通り寄り道しないで早く帰ろっ?
お母さん心配してるかなぁ…」
二人共口を揃えて俺の言葉に賛同してくれた。
よく様子を見てみると裕真はいつもの調子を取り戻しと思っていたが、やはり少し動揺している様だ。
葉月には明らかにシュンとしていて、どう考えても心身共に元気には見えない。
無理もない、葉月に至っては同学年の生徒やクラスメートの凄惨な死に様を見てきたのだ。
だがそこまでの惨状を見てもなお、シュンとしているくらいにしか見えないのはきっと、葉月は見た目とは違い精神力が強いのだろう。
もしも、葉月の立場が俺であったなら、裕真や詩恩の原形を留めていない単なる肉塊となった死体を見てまともでいられる自信はない。
そんな事をぼーっとした頭で考えながら裕真と葉月と俺の三人は終始無言で帰路についた。
家に着いた俺は真っ先にテレビを点けた。
ニュースの話題は爆撃の話題で持ち切りになっている。
内容を見る限り、どうやら教育施設の中でロシア機による攻撃を受けたのは俺の通う学校だけらしい。
テレビのニュースキャスターの話を聞く限りには、日本軍の軍事施設と思い込んだ露軍機パイロットによる誤爆らしい。
そして、何故ロシアが日本に宣戦布告をせずに攻勢に出たのかは不明らしい。
何故かニュースを見ているうちにゾクゾクとする様な高揚感が俺の全身に走る。
危険な非日常を求める本能という奴だろうか。
だが、その高揚感と共に凄まじい程の眠気が俺を襲う。
今日はたくさん色々と信じられない事があったせいで疲れているのだろう。
俺はテレビの電源を消して自室に戻り、倒れ込む様にベッドに寝転がればゆっくりと瞼を閉じて眠りについた。
最初のコメントを投稿しよう!