RISING SUN

第一話「開戦」

中身をこぼさないようにしっかりと両手で蓋の間から蒸気が漏れだすインスタントラーメンの容器を持ち、口に割り箸をくわえてリビングに戻る。

【露軍機、中国機、日本各地を無差別攻撃か】

割り箸を割ってテレビに目をやれば国営放送のニュース番組のテロップが目に入った。
どうやら中国も日本へ宣戦布告後に九州方面の軍事施設へ空爆を行ったらしい。
ロシアだけでなく中国も日本を気に入らないということか、はたまた対米決戦への布石なのか…。

とりあえず国営放送だけでは得られる情報量が少な過ぎる。
俺は携帯でネットニュースのページを開いた。

【日本陸軍北九州第２戦車師団、関東第７空挺大隊壊滅】

まともなニュースはこれだけのだろうか。
日本陸軍北九州第２戦車師団といえば日本で五本の指に入る程の規模の機甲部隊で、90式戦車を筆頭に最新の10式戦車も多数保有しており、保有戦車は200両にも上る。
同じく関東第７空挺大隊といえば日本軍がまだ自衛隊だった頃の空挺部隊の伝統を継いでいる優秀な空挺部隊。
どうやら敵側による先制攻撃が日本側に与えた損害は決して小さくないようだ。
自衛隊時代よりはかなり隊員を増やした隊員数の少なさは否めないが、やはり中国やロシアと比べれば日本軍の装備は最新式。
今回のような奇襲ならまだしも、面と向かっての正規戦ならば陸海空どれを取っても質の面で日本が圧倒している。
机上で判断した結果とは言え、その結果は実戦になってもあまり変わらないと信じたいものだが…。

今、日本の外務省は多国からの問い合わせやマスコミの取材で大忙しだろう。
国会では数年前の憲法改正からすぐに可決された"有事特別国民動員法"を適応するかの議会を行っているとも別のニュースにも上がっていた。

"有事特別国民動員法"とは、国家間紛争や大規模災害時に18～25歳までの独身男女を軍隊に入隊させるという法律だ。
簡単に言えば戦争が起こった時の徴兵、と言ったところか。

もちろん18歳であるこの俺も例外ではない。
嫌な時代に生まれてしまったものだ、70年前の大東亜戦争から現在までこの国は戦争というものをしてこなかった。
だからこんな法律が出来ても国民は騒ぎ立てなかったのかもしれない。
いわゆる平和ボケというものか。