第一話「開戦」

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…朝だ。 まだ瞼の重い目を擦りながらカーテンを開ける。 夏の燦々とした太陽の光が脳を刺激した。 "また学校に行けばみんなに会える" 普通にそう思ってた。 この時の俺にはあんな事が起きるなんて知る由もなかったんだ。 欠伸をしながら部屋を出てキッチンに向かえば皿にトーストが置いてあった、恐らく母親が仕事に行く前に用意していってくれたんだろう。 家族は母親と妹しかいない。 父親は俺が生まれる前に母親と離婚した為、顔を見たことすらない。 妹も関東の全寮制の学校に通っていて、まだ家にいるのは母親と俺だけ。 しかも母親は朝から晩まで仕事をしている為、ほとんど顔を合わせることはなく、まるで一人暮らしをしているような感覚に陥ってしまう。 トーストが乗った皿を持ってソファーとテレビがあるリビングに向かう。 ここで新聞を読みながら朝食を済ませるのが俺の日課だ。 客観的に見ればなかなか知的だと思う。 見た目だけの話だが。 黙々と領土問題の記事でいっぱいの新聞を読みながらトーストを口に運ぶ。 「またかよ…」 新聞の記事を読めばついつぶやいてしまう。 無理もない、毎日こういう話題がニュースやら新聞で取り沙汰されているからだ。 この国は今ある島を巡って隣国である大国と対立している。 まあそれくらいにしか俺には分からない、新聞を読むと言ってもただ流し読みするだけだからな。
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